「地球はとっても丸い」プロジェクトの面々が心を込めてお届けしたエッセイです。
縁はただの縁にあらず/河合妙子
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    河合妙子(トレド・スペイン)


     「縁」という言葉を外国語に置き換えることはかなり難しい。英語やフランス語など欧文に変換しようと試みる場合、「運命」をあてたり、「神様が望むこと」と言ってみたり。簡単に解ってはもらえるが、共有したのは果たして同じ概念なのだろうか。

     わたしが大学生だった頃に知り合ったベトナム人の男の子は、「ベトナムではね、縁は二つあるんだよ。一つの縁だけでは、本当の縁にはならないんだよ」と流暢な日本語で教えてくれた。「二つの縁ねえ……。もう一つの縁とは何だろう」と思いながら、彼の話を聞いていた。うろ覚えだが、円の中に弧の閉じられていない二つの縁が描かれていて、両方が一致しないと本縁には結びつかないというようなことを聞いたように覚えている。

     中国語では、「縁」とは呼ばずに「縁份」と言うことを、その後知った。「縁」と「份」という漢字の組み合わせを見て、これがあのベトナムの青年の言っていたことかと、根拠はなかったが直感した。わたしはベトナム語がわからないので、彼が念頭に置いていた単語を知らない。しかし、「份」には、「文(外側の飾り)と質(内容・実質)とが兼ね備わること」という意味がある*というから、彼の言葉が腑に落ちた。

    「縁」には「ゆかり、つながり、よすが、かかわりあい」あるいは「まつわる。からむ。まとう。めぐらす」という意味があるという**。日本の「縁」だけでは、ただかかわることを意味することになるが、中国語の「縁份」では、質を伴う巡り合いこそが、本当の「縁」になるようだ。だから中国人との会話では「わたしたち、縁があるわねえ」という言葉は、あまり軽はずみには出てこないように思う。

     こんなことを考えるようになったのは、質を伴っていると思わずにはいられない出会いが、最近続いたからである。結婚や恋人をさす縁とは違うのだが、それぞれ、「あの時知らずに蒔いていた種がこんな形で実を結ぶとは」と、その場でしゃがみ込んでしまうほど驚く出会いだったのだ。長い潜伏期間を経て、ようやくわたしの「縁份」がこの世に出てきたな、という印象が強い。これまで自分がしてきた行動に意味が付けられたような気さえする。
    「それだけ歳をとったってことさ」とは、誰にも言わせたくない。人生は今からが本番だと、わくわくしている。

    縁はただの縁にあらず

    *、**:出典は、新版 漢語林[第2版] 兼田正・米山寅太郎著 大修館書店刊

    ≪河合妙子(かわいたえこ)/プロフィール≫
    フォトグラファー&フリーランス・ジャーナリスト。スペイン在住。英・中・仏・西語を使い、取材・撮影・翻訳をする。雑誌、ムック多数。5月に訪れたモロッコでは、わたしの故郷小田原の知人を知っているという女性に会い、マラケシュの空の下で小田原の話に花が咲いた。また11月に取材でご一緒したカメラマンさんは、そのモロッコで会った女性の知人だと知って仰天。時空を超えた出会いにただならぬ気配を感じている今日この頃……。
    | 『縁を感じるとき』 | 00:00 | comments(1) | trackbacks(0) | - | - |
    いろんなご縁に導かれて/椰子ノ木やほい
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      リレー連載「縁を感じるとき」
      文:椰子ノ木やほい (アメリカ合衆国・ミシガン州)
       

       河合妙子さんが書かれた地球丸エッセイ、「縁はただの縁にあらず」を読みながら、「あの時知らずに蒔いていたタネがこんな形で実を結ぶとは」という下りに頷いた。

       “因果”とは、読んで字のごとく原因と結果のことだ。世の中で起こる全てのことに、原因と結果があるけれど、それを導くものに必ず“縁”が作用するんだなと強く感じるようになったのは、最近になってからのことだ。人の平均寿命から考えても、すっかり「人生の折り返し地点」を過ぎてしまった昨今だからこそ、それを感じる力がついてきたのかもしれない。過去に知らずに播かれたタネが、縁を引き起こし、実を結んでいるいくつかの事実にひとり苦笑することが多くなった。

       たとえば、海外勤務などあり得ない自営業の夫と結婚したはずの私は、外国に住むなんて想像すらしなかった。ところが、田舎暮らし、南国サモアに移住という経緯を経て今は、アメリカ、ミシガン州のとある町で暮らしている。どこでどうまちがったのか、いや、どんな縁に導かれたのかとふり返ってみると、全ては私が人生の伴侶として選んだ夫が、過去に撒き散らしたタネと、いろんな縁が作用して今日にいたっていることに気付かされる。

       夫は高校卒業後、バイトで貯めた少ない資金だけを頼りに単身でアメリカ留学に挑んだ。70年代初頭のことだ。たまたま手にした留学についてのノウハウ本に、英語を学びたいなら中西部が良いと書かれていたので、ミシガン州を選んだという。若気の至りとも言えるが、「とりあえず、行ってしまえ〜」というノリで実行した、憧れの留学生活は、学費どころかその日食べることにも苦労する、超ビンボー留学生活を強いられたようだ。当時はまだ、自立を重んじ少々意地をはってでも「親に頼らず」を美徳と考える若者も多かったのだろう。

       我が家が現在住んでいる町は、その昔夫が留学生活を送った地であり、子どもたちが通っている大学は夫の母校でもある。言葉の通じない異国で、空腹を味わいながら、必死で勉強していた頃の若かりし日の夫が、将来家族を伴い再びこの地で暮らす日々が訪れるなんてそのとき、予想することはなかっただろう。この町には、私や子どもたちが知るはずもない夫の青春時代を知る人々が今もいて何かとお世話になっている。

       そんな暮らしの中で育んだ夫の交友関係の中にひとりの(*)西サモア人がいた。同じ留学生として気が合い兄弟のように過ごしたこともあったというが、お互い祖国に戻ってからは音信不通となった。一般家庭に電話があるのも稀という当時の西サモアと日本の距離は、実際の距離以上に遠い存在だったのだろう。アメリカで苦汁の日々ながらも青春時代をわかちあった若者ふたりはそれぞれ自国に戻り、消息を知らないまま結婚し家庭を築いていた。

       出会う前の夫のことなど、私は知る由もなかったが、「西サモアに友達がいる」ということだけは聞いたことがあった。“西サモア”という国名を聞き、NHKの「みんなのうた」で聴いた、『サモア島のうた』を思い出したが、「そんな国ほんとにあったのね」という印象で、この時点では、撒かれていたタネが発芽するとは夢にも思わずにいた。

       結婚後、娘の誕生と同時に、過疎の山村に家を建て田舎暮らしをはじめた私たちは、家庭を円満に切り盛りすることに全エネルギーを注いでいた。3人の息子たちが加わり、6人家族となり、毎日賑やかに暮らしていたある日、知らない男性から電話が入った。なんでも、仕事でサモアを訪れたら、サモア人から人探しを頼まれたという。男性も半信半疑で電話を下さったのだろう。夫が依頼のサモア人を知っているというので驚いたようだ。

       こうして、青春時代をいっしょに過ごしたふたりは、別れてから20年近くも経って、奇跡的に繋がった。縁があったのだろう。彼は5人の子どもの父親になり、西サモア国総理大臣秘書官となっていた。交友が復活すると、「是非、遊びに来いよ」という運びになり、意を決して、西サモアへの家族旅行を実行した。旅行から戻ってからというもの、あまりのカルチャーショックに、南国移住願望がメラメラと湧き上がり、「どうせ一度きりの人生、やりたいことはやってしまえ!」で実行。

       日本を出ることになったとき、友人たちは「転勤族でもないのに、なんでまた?」と不思議がった。現在住むミシガン州の片田舎で出会うアメリカ人には、「広いアメリカで、なぜここなの?」とよく質問される。ましてや、日本人の私たちがサモアに住んだ後でたどり着いたと知ると「なぜ?」はよりしつこくなる。そんなとき、「縁があったのでしょうね」と答えても、人々は納得しない。結局、長々と説明すると、「まるでドラマか小説みたい」なんて言う人もいるが、全てはいろんな“ご縁”に導かれた顛末に過ぎない。人と人が繋がるってこれだからおもしろい。なんでもないような出会いがいつか意味を持つかもしれないのだから。

      *西サモアは、97年に正式国名を独立国サモアに改名した

      ≪椰子ノ木やほい/プロフィール≫
      フリーライター。HP:「ぼへみあん・ぐらふぃてぃ 」田舎に建てた日本のマイホームには、今、私の両親が住んでいる。世知辛くも便利な都会生活をしてきた母が、電話の向こうで「昨日も今日も野菜をいただいたよ。ほんとうにみんな良くしてくれて、ありがたいの」と語る。かつて、子連れで田舎暮らしをすることを反対したのは誰だったっけ? 母よ!私の繋いだ縁に感謝して下さいね。
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