「地球はとっても丸い」プロジェクトの面々が心を込めてお届けしたエッセイです。
暑いも寒いも同じこと? 酷暑から極寒へ
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    郷らむなほみ(カナダ・オンタリオ州在住)


     ハロウィーンまでに初雪が降る……という諺がカナダにあるかどうかは知らないが、どんなに暖かい年でも、10月下旬には初雪があるらしい。昨年、夫に連れられて移住した私への洗礼なのか、10月に初雪を見て、11月中旬には早々と降り積もってしまった。

     そして、その雪はそのまま4月まで融けることがなかったのだから、実に5ヵ月も銀世界だったわけだ。数十年ぶりという豪雪に加えて、いつもながらの厳しい寒さ。真冬の大寒波の時には、強風を伴うと体感温度がマイナス30度になることもあるオタワ地方。

     引越し後、まるで嵐のように降り掛かかった災難は、フランス語ができず仕事に就けない、書類不備で車の登録拒否、日本の運転免許証が期限切れで書き換え不可、前任地から連れて来た猫が交通事故死、夫の家族によるクリスマス休暇乗っ取りなどなど。そして、ある晴れた冬の朝、屋根から落ちた雪の重みで、デッキのひさしが潰れた。次から次へとやって来る大寒波の降雪に、一日3度も雪かきをした日が幾度あったことだろう。精神的にも肉体的にも、もう限界……と何度も思った。

     が、それでも春はやって来る。

     4月に入って、ようやく日中の気温がプラスに転じるようになった。やっと雪が融け始め、「庭に置いたクリスマス飾りが、雪の中から出て来た!」と喜ぶご近所さん。隣人は、数ヵ月ぶりで洗濯物を太陽の下に干した。

    楓の木に吊るされたバケツ、2時間で樹液がたまることもあるという

     そうなると、いよいよ春のイベント、「シュガーブッシュ」の頃となる。シュガーメープルという木の樹液を収穫するのだ。そう、日本でも売られている、メープルシロップ。昔むかーし、移住して来た西洋人が、煮詰めて食用にしていた先住民族を真似たという。朝日が輝く木立のなか、ポトンポトンと透明な樹液がバケツにたまっていくのは、春の音だと実感できる。自然の恵み、楓の樹液はミネラルを多く含み、元々は冬の間の栄養不足を補うもの。ジャリジャリと春の雪を踏み、ぬかるみで靴を汚しながらも、気持ちは軽い。長い長い冬がもうすぐ終わるという喜びと安堵、春への期待でいっぱいなのだろう。まだまだ気温は低く、雪もたくさん残っているが、シロップをいっぱいかけたワッフルを食べ、煮詰め小屋を覗き、土産物を買ったりして農場内を散策。東部カナダの春の行事は、老若男女がこぞって楽しむ。
    煮詰め小屋の中。40リットルの樹液で、1リットルのシロップにしかならない。この湯気、エステに使えないかな?

    煮詰めてできたシロップ、雪の上にたらして棒でからめたら飴のできあがり

     思えば、前任地リヤドでは、3月になると汗ばむようになった。5月にはもう、最高気温は40度を超え、10月になるまで暑さがやわらぐことはない。夏はじっと屋内に留まって耐えるしかないのだ。まるで、カナダの冬のようではないか。一年の約半分が夏だったアラビア半島から、一年の約半分が冬という、正反対の気候へ放り込まれてしまった。よくもまあ、私の身体が頑張ったものだと感心するが、驚いたことに4月中旬の夏のような暑さにダウンしてしまった。寒さに慣れ過ぎたのだろうか? 一気に気温が上がったため、頭も身体も混乱してしまったに違いない。

     庭の木々に新芽が美しい4月下旬、浮き足立ってガーデニングを始めようとする私に隣人が言った。「まだ雪が降る日もあるから、お花を植えるのは6月よ〜」。あぁ、リヤドの暑さが懐かしい!

    ≪郷らむなほみ (ごうはむなおみ)/プロフィール≫
    フリーランスライターで転勤族の妻。バンコク、香港、カイロ、リヤドと、妙に暖かい地域の赴任が多かったためか、寒さにはめっぽう弱い。2007年9月、カナダの首都オタワ郊外に転居。北米の冬に太らなかったのは、スコップ使用のマニュアル除雪の賜物だろう。次の赴任地はどこだろうかと、早くも思いを巡らす今日この頃。 
    | 郷らむなほみ | 11:31 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
    今年はゼッケン334
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      文・写真:郷らむなほみ(カナダ・オンタリオ州在住)

       春が来た! いつもの年より、約1ヵ月も早い雪解け。陽射しがある日は、家の外の方が暖かい。南向きのウチのガレージ、夫がドアを全開にして愛車「フェアレディ240Z」の修復作業をする季節になった。

       また行くのか……。お天気とは裏腹に、思い出すだけで私の気持ちがドーンと沈んでしまう。
      公道を走るレース「タルガ」

       行き先は、カナダの東の果て、ニューファンドランド島。公道を走るラリー「タルガ」に参加するのだ。晴れても降っても、何が何でもカーレース、というノリ。嵐が来ていた日も、コースは短縮されたものの、レース自体は続行された。ツールやスペアタイヤなど荷物運搬担当の私は、トラックを運転して知らない町を右往左往。あんな経験は二度とイヤだ。

       開催地のニューファンドランドは、神々しいほど美しい。そんな自然を楽しめるのはタルガならではだが、猛スピードで突っ走ったら、景色も何もなかろうに。参加者のほとんどはプロかセミプロのラリードライバー、なんでいきなり勤め人のウチの夫が、と思うばかり。昨年は特に、強豪スティーブ・ミレンなんていう有名人が日産GT-Rで参加、Zと同じ会社の車が新旧で走ることになった。夫の場合、若い頃はアマチュアながらもレーサーだったから、きっと彼的には檜舞台なのだろう。気持ちは分かるが、ブランク20年。ダイジョーブか?

       運転技術もさることながら、私なりにリサーチしていくうち、ラリーやレースにはチームを編成するのが常識だと知って仰け反った。ウチの場合、夫とナビゲータ君、そして荷物運びの私というたった3人での参加なのだ。しかも、スポンサーなし。無謀だ……。

       カーレースというのは、恐ろしくお金がかかる。参加登録費用の捻出から始まり、レース用のヘルメットや服・靴・手袋を購入、車輛の改造費用、ラリーコンピュータ、無線機、GPS、燃料費などの他、私たちの宿泊や食事などなど、数え上げたらキリがない。
      公道を走るレース「タルガ」

       おまけに、昔やっていたオタワのスラロームレースに戻り、国際レース用サーキットでの講習会に出て、Zを連れてラリースクールにも行った。ケージの取り付けの際、車内の計器全てを取り除かれて再組み立てが必要になってしまい、移動の最中にもまだ配線作業をしていた昨年。

       それでも、レースなか日の3日目までは、割と順調に飛ばしていた。何日目にリタイヤするのかハラハラしていたのに、クラッシュの度に自分たちで直し、そのままレースを続けてしまったのだから恐れ入る。

       結局のところ、車の修理に手間取って全てのコースを完走には至らなかった。その雪辱をはらすために今年も挑戦するのだそうな。ご苦労さまなことで。
      タルガ

       もともとは、部品取り用に購入した2台目のZ。あまりにも調子が良いので、遂にはラリーに参戦するまでになってしまった。本当に、本当に、タルガは今年限りにしてもらいたいものだ。

      ≪郷らむなほみ・プロフィール≫
      フリーランスライターで、転勤族の妻。バンコク、香港、東京、カイロ、リヤドと異郷の暮らしが続いていたが、カナダ暮らしも遂に3年目。タルガ参戦のせいで、2年連続で転勤のチャンスを逃してしまった。いい加減、車の話は止めて欲しいと思う毎日。タルガブログ
      | 郷らむなほみ | 00:02 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
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