「地球はとっても丸い」プロジェクトの面々が心を込めてお届けしたエッセイです。
第1回:デトロイト・インターナショナル・ジャズ・フェスティバル/9月
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    連載『ミシガンの風に吹かれて』
    文・写真:椰子ノ木やほい(アメリカ合衆国・ミシガン州在住)

    デトロイト河の対岸はカナダ

     ミシガン州の都市といえば、州都のランシング(Lansing 英語発音では最後のgは発音せずランシン)よりも、ビッグスリーのお膝元であるデトロイトが有名だろう。毎年、そのデトロイトでは、レイバーデー(注)と呼ばれる9月最初の月曜を含む週末の4日間を通して、ジャズの祭典が催される。

     ジャズが好きな私はかねてから、このイベントを覗いてみたいと思っていたが、私の住む町からは、往復で500キロほどあり、州内とはいえちょっと立ち寄るには遠い存在だった。しかし、ハイスクールでジャズバンドに参加している末息子が、このイベントで演奏するという機会に恵まれ、昨年、今年と念願のジャス・フェスティバルに行く理由ができた。

    会場の周辺に建ち並ぶ高層ビル

     このジャズ・フェスティバルは、デトロイトダウンタウンの一帯で繰広げられる。開催地周辺5カ所の野外ステージでは、各地から集まったジャズミュージシャンのコンサートが催され、2ヵ所のテント内では、プロミュージシャンとジャズを語ったり、勉強したりするワークショップが開かれる。

     今年の目玉は、ジャズピア二ストの大御所、チック・コリアやハンク・ジョーンズ、デイブ・ブルーベック・カルテットといったところだろう。「“デイブ・ブルーベック・カルテット”なんて聞いたこともない」というジャズに無頓着な人でも、彼らの有名な曲、“Take Five”を知らない人は少ないのではないだろうか。5拍子という変わったリズムで演奏されるアノ曲である。その昔日本では、武田薬品の「アリナミンV」のCMで流れていたので、メロディーを聴けば「あ〜あれね」となるだろう。

     そんな、普通ならば高いチケットを購入しなければ聴くことができないコンサートが全て無料というのがうれしい。コンサートが無料どころか、このイベントは入場料も不要というのだから恐れ入る。

    GM(ゼネラルモーター)本社ビルの手前に設けられた、野外ステージで演奏を楽しむ聴衆

     そんなわけで、イベント開催中はジャズ好きだけでなく、秋晴れの1日を楽しもうという行楽客もぞくぞくと集まってくる。路上には、日本のお祭りを彷彿とさせるような出店がたちならび、お土産が売られ、バーベキューやホットドッグなどの良い香りが会場全体に漂っている。車を運転してその日に帰る必要のない人々は、ビール片手にジャズに酔いしれる休日を楽しむことができるわけだ。
    会場周辺の路上には出店が並び賑わう

     感心するのは、イベントの構成だ。世界的に有名なミュージシャンだけでなく、ミシガンじゅうから選ばれた、大学やハイスクールでジャズを学んでいる学生たちのバンドコンサートも、フェスティバルに組み込まれているため、ジャズ界の将来を担うかもしれない若者たちも、プロに混じって大きな舞台で演奏するチャンスが得られるのだ。
    別の野外ステージではハイスクールの生徒たちによるジャズバンド演奏

     これにより、一般のジャズ愛好家だけでなく、将来、ジャズミュージシャンになるかもしれない予備軍がイベントに集結するため、その家族も聴衆として足を運ぶので集客という意味でも成功している。また、予備軍たちも、自分の演奏が終われば好みのプロミュージシャンの演奏をついでに聴くことができるのでイベント参加の意義は高い。

     これほどのラインナップをそろえているのだから、日本でなら“無料”は有りえないだろう。無料のイベントがどのように賄われているのか、定かではないが、お土産屋や露店の収益、ローカルビジネスからのスポンサー支援、そしてジャズ音楽を育て、歴史あるイベントを守ろうとするミュージシャンたちからの多大な寄付で賄われていると聞く。

     アメリカを代表する車産業が全て斜陽という、不名誉な車の街デトロイトで催されるジャズ・フェスティバルだが、かつてのアメリカらしい「懐の広さ」を感じることのできるイベントといえるのではないだろうか。

    ※注
    アメリカでは毎年9月の第1月曜がLabor Day (労働者の日)と呼ばれる祝日となるため、その前の週末からLabor Day Weekend と称した連休を楽しむ。また多くの学校はこの休み明けから新年度がはじまるので、夏休みの終わりを告げる貴重な休みでもある。


    ≪椰子ノ木やほい/プロフィール≫
    フリーランスライター。1997年のんびりゆったり子育てとシンプル&スローライフを求めて、家族(夫・子ども4人)で南太平洋の小国サモアに移住し、4年間の南国生活を楽しむ。2001年より、アメリカ合衆国・ミシガン州在住。HP「ぼへみあんぐらふぃてぃ」、サモア在住時の暮らしを綴った電子本『フィアフィアサモア』はでじたる書房で発売中。世界各地からの子育て事情を伝える『地球で子育て! 世界のお父さん・お母さんバンザイ』 サイト運営・管理人。
    | 『ミシガンの風に吹かれて』/椰子ノ木やほい | 02:44 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
    第2回 小さな田舎町クレアを訪ねて/3月
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      連載『ミシガンの風に吹かれて』
      文・写真:椰子ノ木やほい(アメリカ合衆国・ミシガン州在住)
      パレード

       ミシガン州の中央あたりに位置する、人口3,000人ほどの小さな町、クレアを訪ねた。クレアはアイルランドからの移民が多い地域で、毎年、セント・パトリックスデー前の週末には小ぢんまりながらも盛大なアイリッシュ・フェスティバルが開催される。

       セント・パトリックというのは、アイルランドにキリスト教を広めた聖人のことで、3月17日は彼の命日であり、アイルランドをはじめ、世界中のいたるところでこの日を祝うためのイベントが開かれる。アメリカでも、ニューヨークやシカゴといった大都市で開かれるセント・パトリックスデーのパレードは毎年テレビのニュースなどで伝えられるのでご存知の方も多いだろう。

       アイルランドからの移民が多くはいそうもない日本では、あまり馴染がないかもしれないと調べてみたところ、意外や意外!昨今では日本全国の大都市だけでなく、小さな地方都市でさえ、セント・パトリックスデーを祝うアイリッシュ・フェスティバルが催されていると知り驚いた。クリスチャンではなくとも盛大にクリスマスを祝う日本人にとって、お祭りの理由は何でもいいのかもしれない。一方、クレアの住民はアイリッシュ系が多いので、本家本元、アイリッシュの血が騒ぐフェスティバルにちがいない。
      ワンちゃんもグリーンの帽子

       このお祭りの特徴は、なんと言ってもアイルランドのイメージカラーとされるグリーンつまり、“緑色”なことだ。お隣のイリノイ州シカゴでは、シカゴ川を色素で緑色に染めてしまったりするほどだ。また、売られるビールも緑色という拘りようで、この日ばかりは、グリーンのものを身につけていないと居心地が悪い。
      全てグリーンで演出

       クレアに到着すると案の定、町全体がグリーンとシャムロック(三つ葉のクローバー)で溢れていた。アイリッシュダンスやコンサート、パレードなど数々のイベントが繰り広げられいつものひっそりとした町が近隣からの訪問者で賑わっていた。小さな町だけに、パレード自体は、ニューヨークやシカゴのソレとは比べ物にならない規模だが、田舎町ならではののどかさが漂い、アットホームなフェスティバルといった雰囲気だ。アイルランド系の移民にとって、セント・パトリックスデーを祝うということは愛国心の現われでもあり、とても意義深いことなのだろう。

       そして、クレアと言えば昨年、たいへん話題になったドーナツ屋さんがあるので紹介しよう。
      Cops & Doughnuts

       その名も “Cops and Doughnuts ” 直訳すると、「警官とドーナッツ」という屋号だ。お店の看板には“Internationally known” (国際的に知られている)と謳われている。小さな町のドーナツ屋さんにしては、昨夏、全米じゅうでニュース報道されたので有名にはちがいないが、国際的に有名か?というと、ちょっと大袈裟ではと思い調べてみたら、日本語でもスポニチの記事を発見したのでまんざら、誇大でもなさそうだ。

       記事にもあるように、創業113年という老舗のドーナツ屋さんが店じまいを強いられていると知り、地元の警察官9人が一致団結してビジネスを買い取り、ドーナツ屋さんの窮地を救ったのだ。アメリカでは、「警官はドーナツが好き」という俗説があるため、冗談のようなホントの話にまたたくまに有名なドーナツ屋さんとなってしまった。
      Cops & Doughnuts

       ドーナツの甘い香りに包まれた店内は“話題のドーナツ”を求める、フェスティバルを訪れたお客でごったがえしていた。さっそくドーナツとコーヒーを買い、店内で食べていたら、オーナーである、9人のうちの1人の警官が「夜勤明けの今日だけど、今からはドーナツ屋さんなんだ」と気さくに話しかけてきた。できたてのドーナツはホームメイドな味わいでふわふわでおいしかった。

       アイリッシュ気質の陽気さに触れ、観光客気分でパレードを楽しみながら、安くておいしい、話題のドーナツを食べるというシアワセな昼下がりだった。

      ≪椰子ノ木やほい/プロフィール≫
      フリーランスライター。1997年のんびりゆったり子育てとシンプル&スローライフを求めて、家族(夫・子ども4人)で南太平洋の小国サモアに移住し、4年間の南国生活を楽しむ。2001年より、アメリカ合衆国・ミシガン州在住。HP「ぼへみあんぐらふぃてぃ」、サモア在住時の暮らしを綴った電子本『フィアフィアサモア』はでじたる書房で発売中。世界各地からの子育て事情を伝える『地球で子育て! 世界のお父さん・お母さんバンザイ』 サイト運営・管理人。
      | 『ミシガンの風に吹かれて』/椰子ノ木やほい | 00:03 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |
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