「地球はとっても丸い」プロジェクトの面々が心を込めてお届けしたエッセイです。
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144号 たきゆき
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     世界が温暖化に憂慮しているにもかかわらず、北ドイツでは氷河期がきたか、と大騒ぎしている、それほどこの冬は長く、厳しい。

     よく考えてみれば、窓の外に広がる白い世界は昨年のクリスマスからずっとこの状態だから、もう二ヵ月半の間、雪がとけていないことになる。それもそのはず、北ドイツでは、降雪量、氷点下気温連続日数ともに30年ぶりの記録なのだ。今年に入ってからも雪は降り続け、やんだとしてもどんより曇って寒いので踏み固められた雪は氷となり、ますます頑固になる。この原稿を書いている3月はじめの今日も朝の気温がマイナス10度だった。

     普段雪に慣れていない地方に大雪が降ると、思わぬ影響がでるものだ。交通が麻痺する、滑って転倒し骨折する人が増えて病院が混む、などは序の口だ。私の住む田舎の小さい村でさえ、毎日のようにトラブル発生だ。たとえば、除雪した雪が道路の端にたまっていき、道幅が狭くなったので、車同士がすれ違えず、譲る、譲らない、で喧嘩がおきたり、バックしようとした車がスリップして事故になったり……。はたまた、隣家の庭小屋が屋根に積もった雪の重さを支えきれず倒壊した。これを見たそのまた隣の主は、自分の小屋が二の舞をふんではならぬ、と屋根の雪下ろしをしようとして転落、骨折した。

     ごみ収集車も来なくなった。問い合わせたら、雪のため道路状況が悪く、危険が伴うため、との説明を受けた。内情を良く知る人に後から聞けば、なんのことはない、経費節約のため、スタッドレスタイヤを装着していない収集車がほとんどとのこと。リスクマネージメントの欠陥が雪のために露呈することになった、恥ずかしい例だ。

     大雪のため、地域の学校が休校になった日も何日かあった。天候が少し落ち着いてやっと行けると思ったら、当の学校から緊急連絡。スクールバスがスリップする恐れがあるので、バス通学の子どもたちを親が迎えに来るようにとの通達だった。バスでも大変な道を、運転の下手な私がどうして走れよう……と、このときほど街中に住んでいないことをうらめしく思ったことはない。

     慣れていない状況への恐怖、普段どおりことが進まないことへの不満は、人の心にもすくなからず影響を与える。店員の対応がつっけんどんだったり、誰かと話していても文句をたらたらきかされたり……聞いているこちらの心にも余裕がないので、どうも愛情をこめた応答ができない気がする。子どもたちも、はじめこそ雪にはしゃいでいたものの、寒さのせいで長時間外遊びができないからか、鬱憤がたまり、いつも以上に短気なようだ。ラジオでは先日「雪うつ病」という新語が登場したと言っていた。

     もうそろそろ限界だ。今、北ドイツの人々は、春の訪れを、文字どおり首を長くして待っている。

    (ドイツ・キール在住 ツムトーベル由起江)
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