「地球はとっても丸い」プロジェクトの面々が心を込めてお届けしたエッセイです。
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第4回最終回 わが心のインドネシア、かな?
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    連載「わが心のインドネシア、かな?」
    文・写真:ワヤコ(東京・日本)

     3年間暮らしたジャカルタは、お世辞にも洗練された街とは言いがたい。いや、この際、はっきり言おう。ジャカルタは、排気ガスが充満する空の下、あふれんばかりの人とモノとゴミが、ごちゃごちゃと同居する相当に混沌とした街だ。

     まず、街角に落ちているゴミ。この街の人は、どうやら道路をゴミ箱と勘違いしているようだ。吸殻を道路に捨てるなんていうのは、まだまだ序の口かわいいもんで、空になった菓子箱を歩きながらポイ。さらに上級者ともなると、運転しながら食べていたパンの包み紙を、車窓から平然と外にポイ。捨てたゴミが後続車のフロントガラスにでもはりついたら一体どうするのだろうか、と気が気ではなかった。

    ゴミがころがるデコボコだらけの歩道
    ゴミがころがるデコボコだらけの歩道

     まだある。近代的な高層ビルが建ち並ぶオフィス街の一角。立派なビルの隣には、もう3年以上も野ざらしにされているであろう建設途中のビルが、その錆び付いた鉄筋ののぞく痛々しい姿をさらしている。街の所々で目にする造りかけのビル。それにしても、地震が多い国で、こんな細い鉄筋だけを使って高層ビルが造られているかと思うと、心配でぞっとする。

    錆びた鉄筋がのぞく忘れ去られたビル
    錆びた鉄筋がのぞく忘れ去られたビル
    細い鉄筋
    鉄筋が細くないですか?

     高架下や家の壁という壁には、原色の落書きが。いずれも、落書きというには、しのびない完成度の高いものばかり。なんでも、空白の壁があるという情報を聞きつけると、どこからともなくスプレーを手にした若者の集団がやってきて、たった一晩で絵を描きあげていくそうだ。もちろん、違法行為なのだが、対応するのが面倒なのだろう、警察も描かれた絵を消すことなく、黙って見過ごしている。そんなわけで、街中いたる所、落書きだらけだ。

    大胆な構図と見事な色使いの落書き
    大胆な構図と見事な色使いの落書き

     そして人々もしかり。物には定価などあったものではなく、店主は人を見て値段を決める。店先には、壊れた電化製品が「新品」として平然と売られていたりする。

     一事が万事この調子。さよう、ジャカルタの街には、無秩序があふれている。

     1万8000以上の島々から成り立ち、300以上の異なる民族が暮らすインドネシア。古くから、さまざまな外来の文化や宗教の影響を受け、そして植民地にもなったことのある複雑な国の事情。独立を果たすまでの長い歴史の間に、持てるものと持たざるものがはっきりと分かれ、今では極端なまでの貧富の差が存在している。そんな国に、すべてのものを束ねる整然とした秩序が存在するわけがない。

     一時、ビジネス用語で「パラダイムの転換」という言葉が好んで使われた。既成概念にとらわれることなく視点を変えて物事を見る、ということらしい。秩序の国、日本で生まれ育った私にとって、インドネシアでの生活は、まさしくこの「パラダイムの転換」を要する生活に他ならなかった。

     そんなインドネシアから、日本に帰ってきて約半年がたち、すべてが計画通りにきちんと運ぶ生活に、ほっとしたものの、このところ妙に居心地が悪い。まだ十分に食べられるのに消費期限が数分過ぎただけで売ることのできないコンビニの弁当。たかだか100円のガムを一つ買っただけで発せられる、感情のこもっていない「ありがとうございました」の挨拶。確かに正しいことには違いないのだろうが、この行き過ぎた管理に対し、一体、どんな反応をしたらいいのだろうか。

     最近、インドネシアが無性になつかしい。街角に落ちているゴミも、造りかけのビルも、そして人のいい加減さも、何もかも、「ティダ・アパアパ(気にしない)」という一言で笑い飛ばし、何事もなかったように悠然と過ぎていく。もしかすると、無秩序だとばかり思っていたインドネシアだが、すべてを飲み込み存在する懐の深い国なのでは、と思えてきた。 

     インドネシアに住んだことのある人の、この国に対する評価は、実に極端で、「すっかり魅了された派」か「ぜったいに受け入れられない拒否派」のどちらかにはっきりと分かれるようだ。中庸はない。

     私はどっち派なのだろう? 住んでいる時には自覚はなかったが、なつかしいところを見ると、「すっかり魅了された」とまでは言い切る自信はないものの、実は性に合っているのかもしれない。今のところ、このタイトルの通り、「わが心のインドネシア、なのかな」と自問自答している最中だ。それを確かめるために、近々、インドネシアを訪れることにしている。

    ≪ワヤコ/プロフィール≫
    約3年間のインドネシア・ジャカルタ生活を終え、6月下旬に日本に帰国。東京在住。インドネシアでは、大好きなインテリア・雑貨店をおとずれそのセンスのよさに驚愕する毎日を送る。現在、インドネシアと日本のインテリア・アートなどを紹介する記事をブログで更新中。ブログIndonesia Arts&Living
    | 『わが心のインドネシア、かな?』/ワヤコ | 00:01 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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