「地球はとっても丸い」プロジェクトの面々が心を込めてお届けしたエッセイです。
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第8話 馬が人より多い村
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    リレー連載『地球丸寄港』
    文・写真:ツムトーベル由起江 (ドイツ・キール近郊在住)

    シューンホルストのワッペン

     ドイツ北部シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州の州都キールから車で20分の小さな村、シューンホルストに暮らしている。引越し当初から「あっちこっちに馬がいるなぁ」と思ってはいたが、村長さんいわく、人口より馬の数のほうが多いのである。一軒家に続くさして大きくもない庭で数頭が駆け回っていることもあるし、隣人のように広い放牧場を持ち、馬主と契約して厩舎などを貸していることもある。我が家の庭の真ん前に放牧場が広がっているので、うちの子供たちはヨチヨチ歩きの頃から、馬を間近に見ながら育っている。馬たちがのんびり草をはむところや軽快にギャロップするところだけでなく、気が合わなくてけんかするところ、病気になって倒れるところも目の当たりにし、彼らなりにいろんなことを学んでいるようだ。

    馬が人より多い村
     
     住んでいる州の名前を答えると、日本では「ああ、乳牛のホルスタイン?」と言われることが多いが、馬の世界では、耐久性があり乗馬によく使われるのがホルシュタイン(ホルスタイン)種なのだそうで、原産地がまさにここ、シュレースヴィヒ=ホルシュタイン州なのだ。ホルシュタイン種馬協会に勤務している友人によれば、日本から種馬の注文を受けることもあるそうだ。バルト海と北海にはさまれたドイツで一番低い、そして平たい土地ということもあり、広い放牧場や乗馬用運動場を持つのに適した地方なのだろう。

     100年ほど前に大農園が売りに出した広大な土地を購入したのが、たまたま馬飼育協会と乗馬学校だった。そんな何の変哲もないきっかけで「馬の村」になったシューンホルストだが、人口たった300人あまりの田舎の村に訪れる人の数は多い。隣人のように元農家の利点を活かして広い土地に牧草地と厩舎を持つ者のところへは、キールの街中に住む人が自分の馬の世話をするため毎日通ってくる。小さい村の中に3つもある乗馬学校にも、遠くの町から親の運転する車で大勢レッスンにやってくる。ドイツの女の子たちに人気の習い事ナンバーワンが乗馬というのも、ここの乗馬学校の繁盛ぶりを見ればうなずける。休暇に乗馬を楽しみたい人のための厩舎付民宿を経営する人もいて、何週間か長期滞在していく海外からの来訪者もよく見かける。村の収入源として馬の果たす役割は大きいようだ。

    馬が人より多い村

     これだけ多くの馬がいれば、村の中で起きるトラブルにも馬が関係してくる。馬と車の接触事故があった、散歩中の馬が子どもの大声に驚いて飛び上がり、子どもがけがをした、馬糞が門の前に落ちていて文句を言ったら口論になった・・・・・・などなど、都会に住んでいれば聞くことのない話題にあふれている。村もある程度の対策はとっており、写真のように「馬も通行する道路」や、「自然遊歩道での乗馬禁止」、「乗馬用遊歩道」などの標識をあちこちにたてている。馬を飼っている人たちも、自主的に「馬に餌をあたえないで」「柵には電流が流れています、ご注意!」といった看板を掲げている。

    馬とともに育つ子どもたち?

     私たち夫婦が乗馬をしないのと、2年生の息子は他のスポーツに精を出しているのとで、うちの家族はまだ馬とあまりお近づきになれていない。毎年初夏に乗馬学校などが主催する「乗馬大会」でポニーに乗らせたり、「馬車レース」を沿道で応援したりする程度だ。でも、そろそろ5歳の娘が乗馬に興味を示し出した。レッスンを始めると、専用ヘルメット、ブーツ、鞭などそろえなければならないものも多く、そのうち馬を購入……なんて話に発展しそうで、親のほうは二の足を踏んでいたのだ。でも、娘がほうきにまたがって「ギャロップ!ギャロップ!」と叫びながら庭を走り回っているのを見ると、そろそろ新たな挑戦の時かとも思う。今年はうちも馬の村で「馬デビュー」となりそうである。

    ≪ツムトーベル由起江/プロフィール≫
    1999年よりドイツ在住。4年前より、ドイツ人の夫と7歳の息子、5歳と3歳の娘とともにキール近郊の田舎暮らし。レポート、翻訳、日本語教育を行う。村の昔話を聞いていると飛び出すプラット・ドイチュ(低地ドイツ語)に魅了され、新たな向学心に燃えている。
    | 『地球丸寄港』/メンバーによるリレー連載 | 00:08 | comments(1) | trackbacks(0) | - | - |
    初めてご連絡いたします。 Se wahnt in Holsteen, nich? キールのお近くに住まわれて折られるのですね。 昨年、ハンブルク、シュベリーン、プレーン、ブロックドルフ、フーズムなどを訪問してきました。Bremstadtの友人からPlattdeutschの小説や入門書を一杯貰い、読むのに四苦八苦しております。 Laboeの芝居小屋で低地ドイツ語の喜劇を見てきましたが、台詞は ??? だけど、面白かったですね。 簡単な文章はドイツ語からの類推を活用し、読んでいますが。
    | wy1 | 2013/03/15 3:24 PM |









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