「地球はとっても丸い」プロジェクトの面々が心を込めてお届けしたエッセイです。
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第10話 ソロラの居心地
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    リレー連載『地球丸寄港』
    文・写真:白石光代(グアテマラ・ソロラ在住)


     グアテマラは多言語、多民族、多文化の国。公用語スペイン語のほかに23の言語が話されている。21言語は、今からさかのぼること3000年、グアテマラの大地に発祥・繁栄したマヤ文明に起源をもつ。壮大な時の中で育まれてきた伝統文化は、現在もマヤの末裔の人たちによって守られている。そんなグアテマラに訪れる観光客は年間170万人(2008年)。観光業が外貨収入のトップをしめる。
      
     私は10年前ボランティアとしてここに来た。現在住んでいるソロラで、子どもたちと2年半花を育てながら暮らした。ボランティアの期間が終わり日本へ帰るとき、「もう一度来るね」とみんなとした約束。それを守ってしまい(?)ここにいる。

     グアテマラの人たちが通う国立職業訓練学校でガイドの勉強をし、国家試験をクリア。政府公認観光ガイドとして、日本からのお客様といろいろなグアテマラを旅している。主要観光地はもちろん、調査や取材の仕事で、普通の旅では行くことのない場所も、知る機会に恵まれている。「自分たちよりグアテマラに詳しい!」とグアテマラの友人たちは感嘆してくれるが、私の知らないグアテマラはまだまだある。新しい発見や出会い、その一つひとつに感動しながら暮らす毎日だ。

    グアテマラ

     そんな中で私が一番幸せを感じるとき。

     それは、旅が終わり家のあるソロラへと戻る時間。お客様とは、クーラー完備、座り心地もいいデラックスバスで旅をする。けれどソロラへは、グァテバスと呼ばれるローカルバスを使う。鉄道がないためバスが一般的移動手段。アメリカのスクールバスのお下がりなので、座席は子ども用の二人掛けと狭い。そこに恰幅のいい大人が3人、前後には子どもたちがくっついているので車内はいつもギューギューの状態だ。運転手たちは、狭い路地も、カーブが続く山道もすごい勢いで飛ばす。その上バス停がないため、乗客が乗り降りするたびにかけられる急ブレーキに、頭を窓や取っ手にぶつけることはざら、天井に打ちつけられることさえある。閉まらない窓から入ってくる真っ黒な排気ガス、乗っている人などお構いなしにかかっている大音量の音楽。仕事が終わった余韻を、ゆっくり味わう暇などはない。

    アメリカのスクールバスのお下がり
     
     けれどなぜか心地いいのだ。空港のある首都グアテマラシティーからソロラまでは3時間。窓から流れる景色が、首都の高層ビル、ホテル、ショッピングモールから、徐々にトウモロコシ畑、土レンガの家、畑で働く人、放し飼いの馬や豚などに変わっていく。それを見ているだけで嬉しくなる。隣に座っているおばあちゃんに話しかけられ、前の席の子どもたちとにらめっこをし、時間はあっという間に過ぎる。

     ソロラに着くと荷物をかつぎ家まで歩く。ソロラは、グアテマラが誇る観光地の1つ、アティトラン湖のほとりにある。湖畔にキリストの聖人の名前をとった12の村には、村ごとにことなる民族衣装をまとい暮らす人々がいる。高台にさしかかるとそのアティトラン湖が見えてくる。あまりの美しさに思わず立ち止まる。

    アティトラン湖

     すると、「MITSUYO〜!」という声とともにどこからともなく現れる子どもたち。かけよってくると両手で抱きつき、ほっぺに「チュ」とキス(挨拶)をしてくれる。そのあったかさ、かわいらしさ。疲れが安らぎに変っていく。

     行きかうソロラテコ(ソロラの人たちの愛称)と挨拶を交わしながら歩く。民族衣装に身をつつんだおじさんたちは、うつむき加減に手を上げて。おばあちゃんたちは現地のカクチケル語で挨拶。世界の果てから来たよそ者でしかない私に、ちゃんと声をかけてくれるのだ。

    ソロラテコ

    「これからどうするの?」
    「グアテマラにずっと住むの?」
    よく聞かれる。
    いくら考えても分からない。グアテマラで暮らすことが、あまりにもあたりまえで、違和感なくここにいる。
    特別にすごいものがあるわけではない。ただ子どもたちのむじゃきな笑顔。友だちのあったかい抱擁。それがあれば幸せだと感じてしまう。多くを望まない生活、いろいろな幸せの形を、ここで知った。

    ソロラの子どもたち

     ソロラにいると、いつの間にか子どもたちと手をつないでいる。小さな手が持つ大きな力。このあったかい手があるかぎり、私はグアテマラにいるのかなと思う。

    ソロラの子ども

    ≪白石みつよ / プロフィール≫1999年よりグアテマラに在住。観光ガイド、通訳、ライター。ソロラで子どもたちの就学支援を目指す「青い空の会」の代表をつとめる。中途半端になっていた織物を習得し、グアテマラに残る村の民族衣装(150種類以上)を少しずつ織っていきたい。
    | 『地球丸寄港』/メンバーによるリレー連載 | 00:00 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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