「地球はとっても丸い」プロジェクトの面々が心を込めてお届けしたエッセイです。
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第13話 帰りたくなる台湾
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    リレー連載『地球丸寄港』
    文・写真:河浦美絵子/メイフェ(台湾・台北在住)

     台湾で暮らした年月がとうとう二桁に突入してしまった。夫の転勤に伴って初めて台湾に来た時には、まさか自分がこの国にこんなにも魅了され、将来は永住したいと考えるようになるとはこれっぽっちも想像していなかった。
     
    中正記念堂

     私が初めて台湾に来たのは1992年。その時は初めての海外生活のスタートであり、また中国語がほとんどできないこともあって毎日が大変だった。郵便局や銀行の窓口などでは、人々がきちんと列に並ぶという習慣がなく、最後部かと思われる人の後ろについても、右から左から人が割り込んできて、窓口にたどりつけない。結局、文句も言えず、用を果たせずに悔し泣きしながら家に戻ったこともあった。タクシーに乗れば遠回りされることが日常茶飯事、運転手のジェットコースターのような荒い運転に幾度となく寿命を縮めた。かといって公共バスはバス停の案内表示がまったく無いために、降りる場所がはっきりわからず、とんでもなく遠い場所まで乗ってしまったこともある。ちょっと頑張って地元の人たちの生活に触れてみようと美容院に行けば、髪の毛は鳥の巣のような爆発スタイルになった。家のクーラーが壊れて修理を頼んでも修理人は予定の時間にまったく現れず、催促の電話をすれば「あ、忘れてた」で済まされ、汗だくで数日を過ごした。本当にどれほどの悔し涙と冷や汗を流し、諦めのため息をついたことだろう。 
    九份 

     そんな台湾はこの十数年でかなりの変化を遂げてきた。今は郵便局や銀行には順番の番号を取る機械が取り付けられ、割り込みをされることはない。タクシーもかなり改善された。シートが破れて中のスポンジが飛び出している車などは見かけなくなり、運転手も大変紳士的である。バスのサービスも向上し、大きな都市では街に地下鉄が張り巡らされた。そして2007年にはとうとう北と南を結ぶ台湾新幹線が開通し、国内の移動が画期的に便利になった。美容院も大変お洒落になり、かの爆発スタイルはあまり見かけなくなった。勝手なもので、こんな風に何もかもが整ってくると、昔のごちゃごちゃしていた台湾のほうが良かったなどと思ったりもする。
    台湾新幹線

     でもそんな中でも変わらないことがある。それは台湾の人たちの「人に無関心でいられない」というところである。私のような外国人に対しても、初対面から「日本のどこから来たの?」「結婚している?」「子どもは?」「何歳?」「お給料はいくら?」というプライベートな質問がどんどん浴びせられる。「こんなことは聞いては失礼かな」という感覚はあまりないようである。地下鉄に乗っていて見知らぬ人から「その服、素敵ね。どこで買ったの?」と突然声をかけられ、そのまま駅を降りるまで長いおしゃべりが展開された。妊婦の時には一生懸命、体重が増えないように気をつけているのに、買い物に行った市場のおばちゃんたちに「なんでこんなにお腹が小さいの!もっとたくさん栄養を取りなさい!」と怒られたが、色々なものをおまけしてくれた。こんな風にこの国にいると誰もが昔からの知り合いのような気持ちにさせられることが多く、それは何か温かく、元気をもらえるのである。

     日本から台湾に旅行に来た人たちは「台湾の人たちって親切ですね」と口をそろえて言う。それはやはりこの台湾の人たちの他人に無関心でいられない国民性によって成される印象であると思う。

     私も最近はそんな距離のない人との付き合いに慣れてきてしまっているのもあり、日本に帰国した時など、周りの人のあまりの無関心さにちょっと寂しくなり、私の方から誰彼かまわず話しかけたい衝動にかられてしまう。と同時に、台湾の人たちが非常に恋しくなり「台湾に帰りたい」と思うのである。 
    台湾の山々


    ≪河浦美絵子/メイフェ プロフィール≫
    高雄、台北合わせて台湾在住10年目。台湾、フィリピン、シンガポールと17年間夫の転勤に伴うが 現在は単身台湾に残り、より深く台湾を知るために大学院にて研究中。台湾に関する市場リサーチや翻訳、コラム執筆など。
     
    | 『地球丸寄港』/メンバーによるリレー連載 | 00:03 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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