「地球はとっても丸い」プロジェクトの面々が心を込めてお届けしたエッセイです。
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第17話 遥かカナダの空の下
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    リレー連載『地球丸寄港』
    文・写真:郷らむなほみ/(カナダ・オンタリオ州)
    カナダ・オンタリオ州

     カナダ人と結婚したのが、かれこれ20年近く前。日本で出会った後、結婚後も外地ばかりを転々としていたのだが、夫が本国へ転勤になり、初めてカナダに住むことになった。私の移民手続きや関税の書類作り、そしてアラビア半島からという遠距離での家探しに難儀した末、なんとかオタワ近郊、ロックランドに家を得ることが出来た。

    カナダ・オンタリオ

    ここは、カナダ東部のオンタリオ州、プレスコット・ラッセル地方。首都のオタワへ車で30分と通勤圏内だが、なぜか最近まであまり人気のない住宅地だった。発展著しいフランコ・オンタリエン(仏系カナダ人)の町は、その昔、東海岸ニューブランズウィック州から移って来たアカディアン(*)たちのコミュニティーなのだという。街の中心地には敬虔なクリスチャンである彼らの立派なカトリックの教会があり、アカディアンの日でもある8月の聖母被昇天祭には、目抜き通りに金の星付き三色旗が掲げられる。幸いにして、古くからの住民は皆、仏語も英語も母国語というカナダでも珍しい完璧なバイリンガル。不動産開発業者はやっとそれに気づいたのか、数年前からの宅地造成で英系住民が増え、多数派のはずの仏系住民がいつの間にか少数派になってしまったらしい。ともかく、夫は玄関先からオフィスビルまでというバス路線で通勤可能、猫には広い庭、夫には大きなガレージ、そして私には新型キッチンと、ほぼ願い通りの家を得ることができた。リスや鹿、野うさぎにスカンク、ワイルドターキーやムースなどなど、四季を通じて庭にはいろんな動物がやって来て楽しませてくれる。
    カナダ

    カナダ・オンタリオ州

     町から一歩離れれば、見渡す限り緑の平原と青い空。とうもろこしや麦の畑、その向こうには雑木林と、長閑な田舎の風景がどこまでも続いている。笹の葉のようなちまきのような、柏餅か桜餅かと思うような、そんなふくよかな香りが草原から漂って来る。路傍の花さえ、とても可憐で清楚だ。春の息吹き、夏の爽やかさ、秋に見る木々の彩りは見事だ。

    カナダ・オンタリオ

    カナダ・オンタリオ州

     翻って、冬。このあたりの冬は、恐ろしく寒い。10月に入ると、途端にみぞれ混じりの雨が降り、ハロウィーン前には初雪をみる。大きなすり鉢状の土地らしく、オタワバレーの冬は気温がマイナス30度になることもしばしば。一昨年は、数十年ぶりという大雪に見舞われ、昨年は寒波で体感温度がマイナス50度という日もあった。一旦、雪と氷に閉ざされたら、4月の雪どけまで地面を見ることはない。

    カナダ・オンタリオ州の冬

     そんなカナダへ越して来て、この9月でようやく2年が過ぎた。オタワ出身のはずの夫は当初、完全に浦島亭主と化していた。世界のいろんな国で暮らしたのに、夫婦揃ってなかなかカナダの暮らしに順応できない……。私は今でも、仏語がしどろもどろだが、それでもようやく隣人たちとも気軽に話が出来るようになり、通っている学校ではスタッフがやっと私の名前を覚えてくれた。次の転勤までの数年間、ほんのツナギのはずの生活なのに、だんだんとこの地域も、家も庭も車も、私の人生の大部分になってしまっている。このままここが終の住処になるかもしれない、そんな気がする秋の夕暮れ……。

    カナダ・オンタリオ州

     間もなく迎える3度目の冬。日本から遥か遠いカナダの地で、今日も私は冬支度に忙しい。

    *アカディアン:カナダ建国以前、フランスからやって来た入植者たち。ノバスコシア、ニューブランズウィック、プリンスエドワードアイランド、オンタリオ州などに住む。主に、農業や漁業に従事、仏領ヌーベル・フランス(現在のケベック州)の人々とはまた違った状況にあった。

    ≪郷らむなほみ (ごうはむなおみ)/プロフィール≫
    フリーランスライター。霊長類、途上国下目、ヒト科、海外転勤族、ナゴタリアン種のメス。2度目の結婚で、海外転勤族の妻になる。バンコク、香港、東京、カイロ、リヤドと、長らく横滑り赴任が続いた後、本国戻りとなった夫にくっついてカナダへ。2007年秋から、オタワ郊外にてまったりとカナダ生活修行中。
    | 『地球丸寄港』/メンバーによるリレー連載 | 03:09 | comments(0) | trackbacks(0) | - | - |









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